ゼロから学ぶプットの役割と概要
オプション取引に取り組む際は、「プット」、「コール」、「権利行使価格」といった普段聞きなれない用語を覚えることが欠かせません。
この耳慣れない用語を覚えなくてはいけない、というのは非常にハードルが高いように思えますが、決してオプション取引が難しいことを意味しておりません。
なぜなら、オプション取引は詰まるところ、「プット」と「コール」、とりわけ前者のプットを押さえればそれだけでオプション取引の全体像を理解したことに近づくからです。
つまり、プットの理解がオプション取引の成功の鍵、と言ってしまって過言ではないのです。
それだけオプション取引の世界において重要になるプットは、どんな役割を担っており、オプション取引でプットを使いこなすには何に気を配ればよいのか、といった点についてこのページではまとめてみました。
このページの目次
オプション取引におけるプットとは?
最初にご紹介するのは、そもそもプットとは何なのか?という点。
実はこの「プットとは何か?」という素朴な質問に端的に答えるとなると、売る権利のことを指します。
売る権利とは?
この売る権利が何かを想像していただくために1つ例を出します。
例えば1月1日現在、1株価格が2,000円の総合商社株があるとします。
こちらを5月1日に1800円で売る、という権利を買った場合、5月1日に1,800円で売る権利を保有したことになるので、1株1,800円で空売りができます。
つまり、空売りをする権利のことがプットなのです。なんとなくご理解いただけましたでしょうか?
下降トレンドで大活躍
ちなみにプットは空売りをする権利である以上、下落トレンドを収益に変える重要な取引になります。
その理由はいたってシンプルで取引自体が売り取引なので、権利行使価格を超えて原証券価格が下落した際に最も大きな収益を獲得できるからです。
したがって、下落トレンドになり始めといったような空売りをすればほぼ確実に稼げる時に利用するのがおすすめです。
「買い」と「売り」で実態は別
ここまでご紹介したような特徴を持つオプション取引におけるプットにはコールオプションと同様に買いと売りが存在します。
そして同じプットであっても買いと売りとでは中身やリスクの大きさが変わります。そこでここでは買いのプットと売りのプットのそれぞれの特徴や中身についてご紹介します。
買いの中身とリスク
プットオプションの買いというのは空売りの権利を購入することであり、権利行使価格で相手に売りつける権利を指します。
原則は空売りで儲けること
例えば取引を設定したときの日経225の価格が20,000円と仮定し、それが権利行使価格とします。
半年後に満期を迎えて日経225の価格が15,000円まで下落した場合、その価格で仕入れを行うことになります。
そのため15,000円で仕入れを行い、権利行使価格である20,000円で売る権利を発動することになるのです。これを行うと20,000円と15,000円の差額である5,000円が手元に残ることになります。
このような効果が期待できる空売りを行う権利を取得できるのがプットオプションの買いです。
権利の放棄も可能
ちなみに空売りをするのは権利である委譲、放棄することもできます。この権利の放棄をすれば、権利を保有していても現実にはその取引は行われないということになります。
したがってうまくいかなかった場合は、取引を行わなければよいということになります。
プレミアムの支払いが必須
ちなみにオプション取引は常に買い手と売り手がセットになっている取引でもあるので、自由に権利を放棄できると売り手が不利になります。
そのため、プットの買いではプレミアムを支払うことになります。そしてこのコストの支払いがあることで取引が成り立っているのです。
このようなコストがあるとはいえ、権利を放棄すればその支払ったプレミアムは戻りませんが、それ以上の損失は発生しないので最大リスクは限定的に収まるメリットがあります。
売りの中身とリスク
先ほど紹介したように権利を放棄できるプットの買いと違い、プットの売りというのは常にリスクとの戦いとなります。
なぜリスクとの戦いになるかというと、プットの売りの最大の損失リスクは理論上では無限大だからです。このことについてこれからご紹介します。
売り手には義務がある
実はオプション取引の売り手には権利が与えられるのではなく、権利が行使された際に応じる義務が課されます。
したがってプットオプションの買い手が有利になる=相場が大きく下落した場合、相手方が権利行使を行うことで損失の発生が確定します。
この時は自分が決定するのではなく、オプション取引の買い手が決定することになるのでその判断に従わざるを得ないところがあります。
またレバレッジがかかっているので、通常の株式取引よりも損失が早く、そして大きくなることが一般的です。
このような構造がある以上、プットの売りを使ったオプション取引は巨額の損失が発生するリスクがあるのです。
損失の発生確率は3分の1に収まる
もちろん、プットの売りを使ったオプション取引はリスクがある分、メリットもあります。
現に相場の値動きは下落・停滞・上昇の3種類しかありませんが、その中で損失となるのは1種類(下落)のみ。
そのほかの2種類(停滞、上昇)となった場合は、売り手の収益ということになるので、確率だけでいえば3分の2の確率で収益が発生することになります。
要するに確率論的には自動的に勝ててしまうゲームなのです。
もちろん、ひとたび損失が発生すればそれなりの損失を負う可能性がある以上、売り取引のみでポジションをとることは避けるのが望ましいのです。
コールとの兼用は不可避
これまでプットの基本的な概要を紹介しましたので、ここからはオプション取引でプットを効果的に活用する方法についてご紹介します。
一本足打法には限界がある
実はオプション取引で効果的にプットオプションを利用するのであれば、ほとんどの場合でコールオプションとの組み合わせをすることが多いです。
その理由はシンプルでして、プット一本でオプション取引に取り組むとどうしても限界があるからです。現にプット一本でオプション取引には片腕で戦うようなものだからです。
この点を考えると、プットを利用するのなら部分的にでもコールは使いたいところです。
ちなみにオプション取引においてコールオプションが何かについてはこちらのページでまとめておりますので、ご興味があればどうぞ。
ちなみにコールとプットを絡めた代表的な手法としては、ストラドル取引やストラングル取引などがあります。
これらはコールオプションの買いとプットオプションの売り、またはコールオプションの売りとプットオプションの売り、を組み合わせてオプション取引に臨む手法です。
これを利用すれば相場が上下どちらに動いたとしても収益を出すことができます。つまり、利益が出る確率が上がるのです。
リスクヘッジにもなる
先ほどコールとの兼用は収益チャンスの拡大になる点をご紹介しましたが、オプション取引でプットとコールを兼用するのはリスクヘッジにも役立ちます。
現に買い同士の取引では相場が上昇または下落することで収益化する以上、できるだけ権利行使価格が近いものを選択したほうがリスクが下がります。
反対に売り取引の場合は相場が収益が出る範囲内に収まってくれることを期待する以上、できるだけ離れた地点で権利行使価格を設定するのがリスクヘッジになります。
こういった具合にプットオプションはコールオプションと反対の効果を持つものでもあるので、リスク回避に役立つのです。
ここまでのまとめ
そろそろこのページの内容も終わりになりますので、ここまでの内容をまとめてみます。
- 売る権利を取引するのがプット
- プットには買いと売りがあること
- 買いは権利をいつでも放棄可能
- 売りはリスクが大きいが勝率が高い
- プットとの兼用は欠かせない
特に一番最後のコールとの兼用の部位は非常に大切なので、オプション取引でプットを利用する際には部分的にでもよいのでコールを絡めることをおすすめします。
これにてこのページの内容は終わりになりますが、最後にこのページに目を通された読者に人気があるページを1ページご紹介しますので、ご興味があればぜひ目を通してみてくださいね。